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世田谷発「食の架け橋プロジェクト」 企業の非常食が子ども食堂へ

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都内の企業が備蓄する非常食を地域の子ども食堂につなぐ「食の架け橋プロジェクト」が世田谷区の“砧の学び舎”でテスト実施されました。 ​

今回のプロジェクトは、一般社団法人ココロtoカラダProjectが企画し、保管場所として世田谷区立明正小学校と世田谷区立砧中学校が協力しています。​
運営面では、砧中学校生徒会をはじめとする生徒・児童に加え、地域の保護者が集まる砧中学校公認の地域サークル「Kinuta-Seed」が活動の軸となり現場を支えています。協賛企業の株式会社VINCENTEや後援する一般財団法人国連支援財団などとも連携しながら、プロジェクト全体を動かしているのが特徴です。

子どもたちと取り組む2つの社会課題

このプロジェクトの大きな特徴は、「企業に眠る非常食や未利用備蓄品を、賞味期限内に地域で循環させる」という明確なコンセプトにあります。 通常であれば、賞味期限が近づいた非常食は廃棄されてしまうことも少なくありませんが、それを地域の学校に集約し、子ども食堂やボランティア団体へ届ける仕組みに変換しました。 これにより、「食品ロスの削減」と、「子どもたちの食資源不足の緩和」という二つの社会課題に同時に取り組むことができます。​

今回のテストケースでは、株式会社VINCENTEからアルファ米とカレーの寄贈要請があり、約200食分の非常食が学校に集められました。 明正小と砧中が校内の空きスペースを非常食の受け入れ・保管場所として提供し、砧中学校公認地域サークル「Kinuta-Seed」が窓口となって、区内の子ども食堂やボランティア団体へ入荷情報を共有しました。 搬入当日は、学校関係者や「Kinuta-Seed」のメンバーが立ち会い、その後の搬出時には子ども食堂の担当者に加え、生徒会の生徒たちも協力して作業を行うなど、現場では大人と子どもが一体となった光景が見られました。​

行動する子どもたち~体験を通じて芽生える“まちを支える力”~

プロジェクトの意義は、単なる物資提供の枠を超えている点にあります。 第一に、企業側にとっては、非常食の入れ替え時に「廃棄コストをかける」のではなく、「地域貢献につなげる」選択肢が生まれることです。 第二に、子ども食堂や地域のボランティア団体にとっては、安定的かつ計画的に非常食が届く可能性が広がり、活動の継続性や安心感が高まります。 そして第三に、学校や子どもたちにとっては、SDGsや食品ロス、防災といったテーマを、教室の外で実践的に学ぶ機会となることです。

特に注目されるのは、子どもたちが「支援される側」から一歩踏み出し、「支援する側」としてプロジェクトに参加している点です。 非常食の受け入れや仕分け、搬出作業など、実際の手を動かすプロセスを担うことで、社会課題が単なる知識ではなく、身近な“自分ごと”として捉えられるようになります。 こうした経験は、「自分たちの関わり方次第で、街の仕組みをより良く変えられる」という実感につながり、将来の地域づくりや市民活動への参加意欲を育む土壌にもなります。​

未来へつなぐ持続可能なまちづくり

また、「食の架け橋プロジェクト」は、「子どもが輝く未来づくりプロジェクト」の一環として位置づけられており、持続可能なまちづくりを子どもたちとともに進めていく試みでもあります。 非常食の循環は、防災力の向上という側面も持っており、いざという時に地域の中で食料をどのように確保し分配するかを考えるきっかけにもなります。 平時から企業・学校・地域団体・子どもたちが顔の見える関係を築いておくことは、災害時の連携の円滑さにも直結します。​

関係者の間では、今回の小規模なテスト実施で得られた気づきや課題を整理し、今後は寄贈企業や受け入れ団体を増やしながらスキームを磨いていく方針が共有されています。 将来的には、世田谷区内での定期的な受け入れ・配分の仕組みづくりだけでなく、他地域でも応用可能なモデルとして発信していくことも視野に入っています。 企業の非常食備蓄という「眠れる資源」を、子どもたちの未来と地域の安心につなげる「食の架け橋プロジェクト」が、どこまで広がりを見せるのか注目が集まっています。

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